読書録:『十六の話』

『十六の話』 (中公文庫)
著者: 司馬遼太郎
内容:
二十一世紀に生きる人びとへの思いをこめて伝える、「歴史から学んだ人間の生き方の基本的なことども」。山片蟠桃や緒方洪庵の美しい生涯、井筒俊彦氏・開高健氏の思想と文学、「華厳をめぐる話」など十六の文集。新たに井筒俊彦氏との対談「二十世紀末の闇と光」を収録。 (文庫本カバーより)
感想:
司馬先生の随筆や評論文を読むと、歴史のみならず哲学、宗教等の多岐にわたる領域での知識、造詣の深さに感動してしまいます。
本書に納められているのものは、宗教学や哲学的な難解な文章から、小学校教科書に採用されたエッセイまで幅広く、興味深く読み進めていけました。
これまでに読んだことのある稿もあったのですが、今回改めて読んでも読み応えがあり、楽しい時間を過ごせた一冊です。
読書日記:『ものづくり経営学』

久々に読書日記を書くことが出来ました。
『ものづくり経営学』
筆者は、藤本隆宏 東京大学教授と東京大学21世紀COEものづくり経営研究センターの研究者の方々。
筆者は日本の製造業の強みを自動車産業の「すり合わせ能力」に見出し、多くの本を執筆されている。この本は『能力構築競争』(中公新書)を読んだことのある人なら、連続性を持って理解できると思います。
本書では、更に非製造業分野、中国、韓国、インドなどでの現状についても、それぞれの研究者が寄稿している。そういう意味では、論文集という体裁の本です。
これだけのボリューム(564頁)を新書にしてしまったところが光文社らしい。余りにボリュームが多いので、興味のあるところだけ読んでも良いのではないかと思います。
日本の産業組織における典型的な系列システムを背景に構築された能力が『すり合わせ能力』だと思う。自動車では、Tier1/Tier2/Tier3という多層構造が現在も産業構造として機能しているので『すり合わせ』を必要とする自動車産業の競争有意が保てている。いずれ、自動車の構造が電気、燃料電池などとなってきた時に、技術的な優位を自動車メーカーが持つのか、コンポネントがより標準化されて電機産業に近くなるのか興味のあるところ。その時に、日本の製造業の強みは何だろう、というのが個人的な感想です。
経営学というのは、経営の結果に対して、その要因・プロセスを定型化するというアプローチで研究されているような気がする。実際のビジネスの現場では、それじゃスピードが遅すぎますね。
本の紹介:『購買・調達の実際』 日経文庫

日経文庫から『購買・調達の実際』が出版された。
著者は、上原修先生。僕は上原先生が代表を務めるCAPS日本支部(CAPS:Center for Advanced Purchasing Studyの略)に研究員として参加させて頂いているので、ここで紹介させていただきます。
購買や調達、あるいはバイヤーという業務は、商行為では買い手になるわけだが、日本ではあまり学術的なアプローチがされてこなかった。欧米では、経営学の中の一分野として確固たる地位を獲得しているのだが。。。
上原先生は、日本サプライマネジメント協会(米国ISMの日本支部)を設立され、購買学・購買のプロフェッショナルの育成・普及に努めておられます。
この書は、コンパクトにエッセンスが纏められており、購買業務について間もない人にも解りやすく体系的な理解を与えてくれるものだと思います。
[目次]
1 購買業務のプロセス;2 サプライヤーの選定・分析・評価;3 購買業務を取り巻く環境;4 購買を取り巻く社内外の関係者;5 価値増強の購買プロセス;6 これからの戦略的購買
[出版社商品紹介]
購買計画の立て方、発注手続きの進め方といった購買管理の実務の基本から、一歩進んだ戦略性を持った購買管理までやさしく解説する。
[著者紹介]
〈上原修〉1950年生まれ。大阪外国語大学卒業。日本サプライマネジメント協会設立、理事長に就任。ISM日本総責任者、仏ビジネススクールESSEC客員教授、法政大学大学院兼任講師などを務める。
読書録 『リーダーシップの旅 −見えないものを見る』
リーダーシップの旅 −見えないものを見る
野田 智義(のだ ともよし)
金井 壽弘(かない としひろ)
光文社新書 2007年2月
本書のカバー言
社長になろうと思って社長になった人はいても、リーダーになろうと思ってリーダーになった人はいない。リーダーは自らの行動の中で、結果としてリーダーになる。はじめからフォロワーがいるわけではなく、「結果としてリーダーになる」プロセスにおいて、フォロワーが現れる。リーダーシップは、本を読んで修得するものでも、だれかから教わるものでもない。それは私たち一人一人が、自分の生き方の中に発見するものだ。リーダーシップはだれの前にも広がっている。何かを見たいという気持ちがあれば、可能性は無限に膨らむ。自らが選択し行動することで、人は結果としてリーダーと呼ばれるのだ。
目次
序章 「リーダーシップ」はなぜ心に響かないのか
第1章 リーダーシップの旅
第2章 なぜリーダーシップが必要なのか
第3章 旅の一歩を阻むもの
第4章 旅で磨かれる力
第5章 返礼の旅
感想
野田先生と金井先生がリーダーシップの自説をテンポよくエッセイ風に相手の論説を受ける形で主題を展開していく、どんどん先が読みたくなる本でした。古今東西の歴史上の人物、ビジネスの世界での事例を織り交ぜながら、また、リーダーシップ、組織行動、心理学の領域までの学説を参照しながらの文章は自分にとっては大変な良書だと思えました。しかもこれが新書として発刊されたことに、なお感動した。
組織の中で部下を持ち、日々部下との関係で、上司との関係で、利害関係を持つ人との関係でマネジメントを実践していると、なかなか振り返り、基本に照らし合わせることを忘れがちになるので、時々こういった本を読み振り返ることも大切です。今、『マネジメント』と書いたが、マネジメントとリーダーシップは全く異なるものだと本書では書かれており、なるほどと納得させられた。
『マネジメントとリーダーシップは異なる。マネジメントは、複雑性に対処し、組織の安定性と持続性を維持するために機能する。これに対し、リーダーシップは創造と変革を扱う。「見えないもの」を見て、その実現に向けて人々の価値観や感情に訴え、彼らの共感を得て、自発的な協働を促す。』
リーダーシップとは組織や肩書きを越えても成立する普遍性の高いものなんですね。
良い本に巡り合えました。
野田 智義(のだ ともよし)
金井 壽弘(かない としひろ)
光文社新書 2007年2月
本書のカバー言
社長になろうと思って社長になった人はいても、リーダーになろうと思ってリーダーになった人はいない。リーダーは自らの行動の中で、結果としてリーダーになる。はじめからフォロワーがいるわけではなく、「結果としてリーダーになる」プロセスにおいて、フォロワーが現れる。リーダーシップは、本を読んで修得するものでも、だれかから教わるものでもない。それは私たち一人一人が、自分の生き方の中に発見するものだ。リーダーシップはだれの前にも広がっている。何かを見たいという気持ちがあれば、可能性は無限に膨らむ。自らが選択し行動することで、人は結果としてリーダーと呼ばれるのだ。
目次
序章 「リーダーシップ」はなぜ心に響かないのか
第1章 リーダーシップの旅
第2章 なぜリーダーシップが必要なのか
第3章 旅の一歩を阻むもの
第4章 旅で磨かれる力
第5章 返礼の旅
感想
野田先生と金井先生がリーダーシップの自説をテンポよくエッセイ風に相手の論説を受ける形で主題を展開していく、どんどん先が読みたくなる本でした。古今東西の歴史上の人物、ビジネスの世界での事例を織り交ぜながら、また、リーダーシップ、組織行動、心理学の領域までの学説を参照しながらの文章は自分にとっては大変な良書だと思えました。しかもこれが新書として発刊されたことに、なお感動した。
組織の中で部下を持ち、日々部下との関係で、上司との関係で、利害関係を持つ人との関係でマネジメントを実践していると、なかなか振り返り、基本に照らし合わせることを忘れがちになるので、時々こういった本を読み振り返ることも大切です。今、『マネジメント』と書いたが、マネジメントとリーダーシップは全く異なるものだと本書では書かれており、なるほどと納得させられた。
『マネジメントとリーダーシップは異なる。マネジメントは、複雑性に対処し、組織の安定性と持続性を維持するために機能する。これに対し、リーダーシップは創造と変革を扱う。「見えないもの」を見て、その実現に向けて人々の価値観や感情に訴え、彼らの共感を得て、自発的な協働を促す。』
リーダーシップとは組織や肩書きを越えても成立する普遍性の高いものなんですね。
良い本に巡り合えました。
読書録 『アメリカよ、美しく年をとれ』
久々の読書録アップです。
『アメリカよ、美しく年をとれ』 猿谷 要(さるや・かなめ)
岩波新書 2006年8月発行

<著者略歴>
1923年生まれ。東京大学文学部卒業。その後同大学院修了。日本大学、東京女子大学、駒沢女子大学教授、およびハーヴァード大学、ハワイ大学、コロンビア大学、エモリー大学、コロラド大学などの客員研究員を歴任。現在、東京女子大学名誉教授。専攻・アメリカ史。
<本書の概要>
本書の内容は、本書のカバーに書かれていることばによると、次の通りです。
『かつて若い国、自由の国として世界から愛されたアメリカは、いま巨大な軍事力に支えられた「大米帝国」として嫌われ、衰退に向かうかに見える。やがて老醜をさらすことになるのだろうか。半世紀以上、リベラルな立場から歴史家としてこの国とつき合ってきた著者が、その心象風景に重ねて米国の明暗を描き、今後の進むべき道を提示する。』
<読書感想>
著者の作品を読むのは記憶するなかではこれが二冊目です。一冊目は『物語 アメリカの歴史 超大国の行方』(中公新書)を、2000年の春先に読んでいるはずだ。仕事でアメリカに赴任することが決まり、アメリカの歴史や社会について知るために、当時何冊か読んだ書籍の中の一冊だった。
9・11の前後で自分の周りの風景はかなり変わったことは記憶に新しい。突然、職場の机のひとつひとつに星条旗が掲げられた。街を走るクルマのほとんどが星条旗や派兵を支持するステッカーが貼られた。こういう変化の中に身をおいた自分としては、アメリカ成立からブッシュ政権のとった政策までを、アメリカという国を一国のライフサイクルとして捉えた著者の表現に大変興味を感じ、また納得することの多いアメリカ学です。
アメリカの歴史はその出現の時から、他民族との戦いと融合の繰り返しである。著者はアメリカを壮年期に入ったと捉え、美しく年をとれ、軍事力より文化力をと語りかけている。時代が進むにつれ、アメリカが近現代に残した文化はいずれ古典に変わっていきます。有形・無形の文化遺産を後世に残し、文化的な影響力を残し続ける国であって欲しい。
自分にとってアメリカ第二の故郷と言って良いくらいです。そんなアメリカが「美しく年をとる」とますますその魅力がますでしょう。
一方、安部首相が唱える『美しい国、日本』は既に国力が壮年期に入っていることを自覚してのことだろうか。
『アメリカよ、美しく年をとれ』 猿谷 要(さるや・かなめ)
岩波新書 2006年8月発行

<著者略歴>
1923年生まれ。東京大学文学部卒業。その後同大学院修了。日本大学、東京女子大学、駒沢女子大学教授、およびハーヴァード大学、ハワイ大学、コロンビア大学、エモリー大学、コロラド大学などの客員研究員を歴任。現在、東京女子大学名誉教授。専攻・アメリカ史。
<本書の概要>
本書の内容は、本書のカバーに書かれていることばによると、次の通りです。
『かつて若い国、自由の国として世界から愛されたアメリカは、いま巨大な軍事力に支えられた「大米帝国」として嫌われ、衰退に向かうかに見える。やがて老醜をさらすことになるのだろうか。半世紀以上、リベラルな立場から歴史家としてこの国とつき合ってきた著者が、その心象風景に重ねて米国の明暗を描き、今後の進むべき道を提示する。』
<読書感想>
著者の作品を読むのは記憶するなかではこれが二冊目です。一冊目は『物語 アメリカの歴史 超大国の行方』(中公新書)を、2000年の春先に読んでいるはずだ。仕事でアメリカに赴任することが決まり、アメリカの歴史や社会について知るために、当時何冊か読んだ書籍の中の一冊だった。
9・11の前後で自分の周りの風景はかなり変わったことは記憶に新しい。突然、職場の机のひとつひとつに星条旗が掲げられた。街を走るクルマのほとんどが星条旗や派兵を支持するステッカーが貼られた。こういう変化の中に身をおいた自分としては、アメリカ成立からブッシュ政権のとった政策までを、アメリカという国を一国のライフサイクルとして捉えた著者の表現に大変興味を感じ、また納得することの多いアメリカ学です。
アメリカの歴史はその出現の時から、他民族との戦いと融合の繰り返しである。著者はアメリカを壮年期に入ったと捉え、美しく年をとれ、軍事力より文化力をと語りかけている。時代が進むにつれ、アメリカが近現代に残した文化はいずれ古典に変わっていきます。有形・無形の文化遺産を後世に残し、文化的な影響力を残し続ける国であって欲しい。
自分にとってアメリカ第二の故郷と言って良いくらいです。そんなアメリカが「美しく年をとる」とますますその魅力がますでしょう。
一方、安部首相が唱える『美しい国、日本』は既に国力が壮年期に入っていることを自覚してのことだろうか。

