読書日記:『CSRの本質−企業と市場・社会』

正月休みに読んだ本の紹介です。CSRやコンプライアンスという言葉が、毎日のようにニュースで話題になる今日この頃ですね。
出版社:中央経済社
著者:十川 広国(ソガワ ヒロクニ)
慶応義塾大学商学部教授、商学博士。1942年大阪生まれ。1966年慶応義塾大学商学部卒業。1971年同大学院博士課程単位取得満期退学。慶応義塾大学商学部長、公認会計士第二次試験委員、通産省経営力委員会委員などを歴任
【目次】
序章 本書の問題意識・課題と構成/第1章 市場経済の変質と古典的自由経済理念が持つ問題/第2章 組織社会の発展と企業/第3章 コーポレート・ガバナンスをめぐる問題/第4章 生長鈍化と雇用問題/第5章 環境問題/第6章 イノベーションと企業/第7章 企業を取り巻く多様なステークホルダーと社会/第8章 CSRと企業の対応/第9章 CSRとグッドウィルの構築
【概要】
本書は、CSRの本質とは何かを問おうとしている。社会的制度として存在する企業とは、経済実体としての性格をも持ち合わせており、企業の価値創造プロセスの活性化をいかに果たすかがまず問題にされなければならないという主張が前提としてなされている。そのために価値創造プロセスの活性化、イノベーション問題などについての経営学的検討を理論的・実証的な視点から試み、CSRはいかにあるべきかについて、グッドウィルの概念を用いて検討している。(本書カバーより)
【感想】
最近、書店には多くのCSR関連本を目にしますが、本書は主要な経営学の学説の視点からアプローチしているので、主要な経営学説についてのレビューをすることが副次的にできました。
著者は「企業は、経営の好循環を実現するためには、まず企業活動への直接的参加者への利害の充足→価値創造プロセスの活性化→イノベーションの実現→経済的効率・CSRの遂行→グッドウィルの形成という関係を構築しなければならないものといえる。」と繰り返している。そして、トップマネジメントの果たすべき役割を述べている。
企業に対する社会的評価を『グッドウィル』とし、その重要性については良く理解できるのですが、『グッドウィル』は何によって計測が可能なのだろう。やはり企業価値の増加を意識した株価なのでしょうか。そうだとすると、株主を最重要なステークホルダーとする現在主流の企業経営と結局は同じにならないか、という疑問がやはり残ってしまった。
株主傾倒の企業経営からの寄り戻しとして、今後のCSRのトレンドを良く見ていきたいと思います。(最後は本書とは関係ない感想かも)
CSR関連本では、これも面白いようです。
読書日記: 『個人主義とは何か』

お正月休みに読みましたが、頭が筋肉痛になる類の本です。そういう思索の時間を求めている方にはお薦めです。
出版社:PHP新書
著者:西尾 幹二
評論家、ドイツ文学者。1935年東京生まれ。東京大学文学部独文科卒業、同大学大学院文学修士、文学博士。ニーチェ、ショーペンハウアーの研究、翻訳を出発点とし、文学、教育、政治、国際問題など幅広いテーマをめぐる旺盛な評論活動を展開。近年、その主要な関心は、明治以後の西洋中心史観を排した新たな日本史像の確立へと向かっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
【概要(本書カバーより)】
グローバリゼーションが進む現代もなお、日本人は西洋の価値観に囚われているのではないだろうか。われわれが用いる"個人"や"自由"といった周知の概念が、そもそもは「輸入品」である。本書では、日本特有の個と社会のあり方について、諸外国の文化と比較して考察する。いまも強い訴求力をもって読者に迫る、人間の懐疑と決断を真摯にみつめた思想家の原点。
一九六九年の発刊以来、五十版近くを重ねた名著『ヨーロッパの個人主義』がよみがえる。復刊にあたり、新たに三十ページを加筆した完全版。
【目次】
第1部 進歩とニヒリズム(封建道徳ははたして悪か;平等思想ははたして善か;日本人にとって「西洋の没落」とはなにか)
第2部 個人と社会(西洋への新しい姿勢;日本人と西洋人の生き方の接点;自分自身を見つめるための複眼;西洋社会における「個人」の位置;日本社会の慢性的混乱の真因;西欧個人主義とキリスト教)
第3部 自由と秩序(個人意識と近代国家の理念;東アジア文明圏のなかの日本;人は自由という思想に耐えられるか;一九六八年の危惧—旧版あとがき)
第4部 日本人と自我(日本人特有の「個」とは;現代の知性について—あとがきに代えて)
【感想】
第一部から第三部までは講談社現代新書として1969年に発刊されており、今回第4部が加筆されてPHPから新書で発刊された。本来、新書はこのような内容の評論を多く納めていたのだろう。1969年当時、著者が33歳でこの思想書を執筆したことに驚いた。内容、文体ともにかなり高度(少なくとも自分には)であり、哲学、宗教の若干の知識がないと容易には理解できないのではないでしょうか。自分は何度も同じ文章を読み返すこともありました。
著者自らも書いているように、大学入試問題に引用されることも度々あるようで、まさに大学入試の難しい評論文を265ページ読んだということで精一杯でした。
氏の考え方に対しては様々な見方があるようで、それは各々が判断すれば良いのだと思います。
40年経って、インターネットの普及や経済のグローバル化で日本とヨーロッパの距離感は変わっている。根源的にはヨーロッパと日本における「個と社会のつながり」の違いは変わらないのだろうが、自分自身の感受性の低さゆえ、著者が述べているレベルでの差を実感できていないような気がしました。
読書日記:『千年働いてきました−老舗企業大国ニッポン』
『千年働いてきました−老舗企業大国ニッポン』
出版社:角川ONEテーマ21
著者:野村 進 ジャーナリスト・拓殖大学教授

【概要】
老舗の製造業にスポットをあて、なぜ日本にだけ老舗企業が生き残るのか、会社の寿命は何で決まるのか、潰れない会社の持続力の源泉は何かを著者が実際に老舗企業を調べてエッセイ風につづっている。
【感想】
経営学の専門家でない著者が書いた本書はとても読み易く書かれています。実際に老舗企業を訪問し、調査・インタビューしたことを基に書いているが、難しい経営の専門用語を知らなくてもスッと入ってきます。
折りしも、老舗ブランド企業が(著者の言う老舗は数百年なので比較にはならないが)、コンプライアンス上の問題を起こし、消費者の信頼を失っていくことの多い昨今、ここに登場する企業を見ると、必ずしも同族経営・家族経営が悪いわけではないし、敢えて株式を非公開としている企業もある。
読んで感じたのは、環境変化にしなやかに対応し、前世代から何を受け継ぎ、次世代に何を引く継ぐのかが明確で、社会のために自分たちがどのように役立つかをしっかりと受け継いでいる企業が、高い持続性の必要条件の一つであるということは言えるようです。昨今のCSR経営もそれを意識しての経営トレンドなのでしょうか。
出版社:角川ONEテーマ21
著者:野村 進 ジャーナリスト・拓殖大学教授

【概要】
老舗の製造業にスポットをあて、なぜ日本にだけ老舗企業が生き残るのか、会社の寿命は何で決まるのか、潰れない会社の持続力の源泉は何かを著者が実際に老舗企業を調べてエッセイ風につづっている。
【感想】
経営学の専門家でない著者が書いた本書はとても読み易く書かれています。実際に老舗企業を訪問し、調査・インタビューしたことを基に書いているが、難しい経営の専門用語を知らなくてもスッと入ってきます。
折りしも、老舗ブランド企業が(著者の言う老舗は数百年なので比較にはならないが)、コンプライアンス上の問題を起こし、消費者の信頼を失っていくことの多い昨今、ここに登場する企業を見ると、必ずしも同族経営・家族経営が悪いわけではないし、敢えて株式を非公開としている企業もある。
読んで感じたのは、環境変化にしなやかに対応し、前世代から何を受け継ぎ、次世代に何を引く継ぐのかが明確で、社会のために自分たちがどのように役立つかをしっかりと受け継いでいる企業が、高い持続性の必要条件の一つであるということは言えるようです。昨今のCSR経営もそれを意識しての経営トレンドなのでしょうか。
読書録:『十六の話』

『十六の話』 (中公文庫)
著者: 司馬遼太郎
内容:
二十一世紀に生きる人びとへの思いをこめて伝える、「歴史から学んだ人間の生き方の基本的なことども」。山片蟠桃や緒方洪庵の美しい生涯、井筒俊彦氏・開高健氏の思想と文学、「華厳をめぐる話」など十六の文集。新たに井筒俊彦氏との対談「二十世紀末の闇と光」を収録。 (文庫本カバーより)
感想:
司馬先生の随筆や評論文を読むと、歴史のみならず哲学、宗教等の多岐にわたる領域での知識、造詣の深さに感動してしまいます。
本書に納められているのものは、宗教学や哲学的な難解な文章から、小学校教科書に採用されたエッセイまで幅広く、興味深く読み進めていけました。
これまでに読んだことのある稿もあったのですが、今回改めて読んでも読み応えがあり、楽しい時間を過ごせた一冊です。
読書日記:『ものづくり経営学』

久々に読書日記を書くことが出来ました。
『ものづくり経営学』
筆者は、藤本隆宏 東京大学教授と東京大学21世紀COEものづくり経営研究センターの研究者の方々。
筆者は日本の製造業の強みを自動車産業の「すり合わせ能力」に見出し、多くの本を執筆されている。この本は『能力構築競争』(中公新書)を読んだことのある人なら、連続性を持って理解できると思います。
本書では、更に非製造業分野、中国、韓国、インドなどでの現状についても、それぞれの研究者が寄稿している。そういう意味では、論文集という体裁の本です。
これだけのボリューム(564頁)を新書にしてしまったところが光文社らしい。余りにボリュームが多いので、興味のあるところだけ読んでも良いのではないかと思います。
日本の産業組織における典型的な系列システムを背景に構築された能力が『すり合わせ能力』だと思う。自動車では、Tier1/Tier2/Tier3という多層構造が現在も産業構造として機能しているので『すり合わせ』を必要とする自動車産業の競争有意が保てている。いずれ、自動車の構造が電気、燃料電池などとなってきた時に、技術的な優位を自動車メーカーが持つのか、コンポネントがより標準化されて電機産業に近くなるのか興味のあるところ。その時に、日本の製造業の強みは何だろう、というのが個人的な感想です。
経営学というのは、経営の結果に対して、その要因・プロセスを定型化するというアプローチで研究されているような気がする。実際のビジネスの現場では、それじゃスピードが遅すぎますね。

