『おじさんはなぜ時代小説が好きか』

『おじさんはなぜ時代小説が好きか』 岩波書店
著者: 関川 夏央
時代小説・歴史小説が好きな自分にとって興味を引くタイトル。さらに著者の関川夏央氏は司馬遼太郎著作に対する評論も行っており、かねてから気になっていた作家なので読んでみました。
本書はおじさんがなぜ時代小説を好むかというテーマに対する分析ではなく、時代小説家の作品評論を書かれた時代背景、作家の生い立ちなどを絡めて明らかにしていこうとするものでした。
取り上げられる作家は次の通りです。
第1章 「小僧」は神様を信じない―山本周五郎
第2章 吉川英治の『宮本武蔵』と「修養主義」
第3章 「戦後」を問いつづけた司馬遼太郎
第4章 「海坂藩」の原風景―藤沢周平
第5章 山田風太郎―その教養と奇想
第6章 「侠客」その孤影と集団の両像―長谷川伸、村上元三など
第7章 「おじさん」はなぜ時代小説が好きか―森鴎外ほか
自分が読んだことのあるのは、司馬遼太郎、藤沢周平、森鴎外。吉川英治はNHK大河ドラマの『宮本武蔵』。 関川氏の解説に、「そういうことだったのか、なるほどね。」と単純な思考回路を持つ自分は納得させられ、作品に対する理解が深まったような気にさせてくれる一冊でした。
最後にあとがきの一節を紹介。
「おじさんと時代小説の相性のよさは確かに「保守化」と関係がある。しかしその根底には「人間は進歩しない」という経験的確信がある。生活は便利さを刻々と増すが、それは人間の質や幸福感の向上とはなんら関係がない、という苦い認識です」
だから、百年前、二百年前の人間の生き方に学び、感動できるのでしょう。
『思考の整理学』−夏休みの課題図書(1)
『思考の整理学』 ちくま文庫
著者:外山 滋比古

子供の頃、夏休みなると課題図書というのが与えられ、感想文を提出する宿題でありました。そんなことを思い出しながら、この夏、少し普段の読書嗜好から離れてみようと思って読んだ一冊目です。
本の内容として背表紙に紹介されている言葉は、「アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには?自らの体験に則し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する、恰好の入門書。」です。
文庫として刊行されたのが1986年で、それ以来ロングセラーとなっていることに納得しました。“もっと若い時に読んでいれば・・・そう思わずにはいられませんでした”と帯にあるのですが、同感です。
『思考』という抽象テーマに対して、ハウツー本ではなく、また難しい学術論文でもなく、とても読みやすい筆致でかかれたエッセイです。きっとこれからも読み継がれる古典になるのではないでしょうか。
入試問題に引用されることも多いそうですが、読めば自然とその理由がわかります。氏の文章はとても滑らかにすっと頭に入ってくるのです。音読しても、美しい文章だろうと思います。著者の最近の作品を読みたくなりました。
著者:外山 滋比古

子供の頃、夏休みなると課題図書というのが与えられ、感想文を提出する宿題でありました。そんなことを思い出しながら、この夏、少し普段の読書嗜好から離れてみようと思って読んだ一冊目です。
本の内容として背表紙に紹介されている言葉は、「アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには?自らの体験に則し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する、恰好の入門書。」です。
文庫として刊行されたのが1986年で、それ以来ロングセラーとなっていることに納得しました。“もっと若い時に読んでいれば・・・そう思わずにはいられませんでした”と帯にあるのですが、同感です。
『思考』という抽象テーマに対して、ハウツー本ではなく、また難しい学術論文でもなく、とても読みやすい筆致でかかれたエッセイです。きっとこれからも読み継がれる古典になるのではないでしょうか。
入試問題に引用されることも多いそうですが、読めば自然とその理由がわかります。氏の文章はとても滑らかにすっと頭に入ってくるのです。音読しても、美しい文章だろうと思います。著者の最近の作品を読みたくなりました。
読書日記:『部長の経営学』

久しぶりの読書日記です。
『部長の経営学』筑摩新書
著者: 吉村 典久 和歌山大学経済学部教授。専攻は経営戦略論、企業統治論
【内容】
ここ数年、会社をとりまく情況が揺らいでいる。企業買収、無理な増配要求、安定株主工作を批判する投資家。会社経営が、投資家の短期的な論理に振りまわされ、長期的な成長の青写真を描くのが難しくなった。こうした変化のなかで、繁栄の果実を手にするために、会社は何をなすべきなのか。その鍵を握るのは、部長・課長だ。「ウチの会社」に深く関わるミドル層は、会社に活力をもたらし、変革を導くパワーを秘めている。混迷の時代における企業の成長戦略を明確に記した、すべてのビジネスパーソン必読の経営論。だそうです。
【目次】
第1章 世の中にとっての企業の役割とは(株主の存在にたいするミドルの認識企業の存在意義 ほか)
第2章 日本企業を取りまく現実(株式市場の現在―資金「調達」の場から「提供」の場へ 株式市場へのキャッシュ・アウト ほか)
第3章 優良企業に見る統治の姿(長期的なコミットメントをもつプレイヤー―中長期の企業経営を担保株式所有構造に見る「同族」の存在感 ほか)
第4章 「ミドルの声」を統治に活かせるか(「ミドルの声」への注目 「株主重視」の統治形態を問う ほか)
第5章 「ミドルの声」を統治に活かすために(経営の自由度を高める持ち合い 株式の長期保有を促す工夫 ほか)
【感想】
タイトルは部長の経営学となっていますが、内容は企業統治論といったほうが良い内容です。そして日本企業を対象にした論の展開になっていますので、興味深く読み進められました。以前読んだ『だれのための会社にするか』と扱うテーマが似ており、やはり現在の株式市場を強く意識した経営に警鐘を鳴らしています。
最近の株価低落によりこれまで株式市場に向かっていた資金の流れが変わる潮目である昨今、しっかり考えるべきテーマだと思いました。
減益になっても配当は維持あるいは増配により配当性向は上昇するでしょう。一方、消費者物価が上昇する中でも、労働分配率が大きく上昇することもなさそうですし、ステークホルダーへの配分バランス、内部留保とのバランスなど、舵取りの難しい時期です。こういうことも考えさせてくれる一冊でした。
読書日記:『日本歴史を点検する(新装版)』講談社文庫

海音寺潮五郎と司馬遼太郎という日本の歴史小説の系譜を代表する二大作家による対談集です。
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
青年を愛した長州、薩摩急旋回の因など、維新へ向けての諸藩の動静。勝海舟、西郷隆盛、島津斉彬、吉田松陰、大久保利通など傑物たちの人物と思想。幕府の善政、尊王攘夷と危機意識、日本人の潜在秩序、維新の二つの功績、封建の土壌の功罪等々―歴史文学の巨匠二人が博識を駆使して“日本人とは何か”を考察した快著。
【目次】(「BOOK」データベースより)
封建の土壌/イデオロギーと術/天皇制とはなにか/産業革命と危機意識/西郷と大久保/日本人の意識の底/幕末のエネルギー/言語感覚の特異性
<感想>
歴史小説の大作家同士の対談なので、話し言葉とは言え、難しい観念的な文章となっているところもあり、読み返さないと頭にはいってこない部分もあるが、司馬史観が存分に展開されており、それを受け止める海音寺潮五郎の歴史造詣の奥深さが読み応えがあります。
幕末の話題が多いので、幕末・維新好きの人にはお薦めの一冊です。
読書日記 『戦略的思考の技術−ゲーム理論を実践する』

『戦略的思考の技術 −ゲーム理論を実践する』
中公新書
著者: 梶井 厚志
【内容】
自分の利害が、自分の行動だけでなく、他人の行動によってどう左右されるか、という状態が戦略的環境であり、その分析ツールがゲーム理論である。ビジネス交渉はもちろん、バーゲンでの買い物や合コンの席順といったことまで私たちは他人の行動を織りこみつつ戦略を立て実行しているのだ。本書は身近な話題をふんだんに使い、コミットメント、シグナリングなどゲーム理論のキーワードを解説しながら読者の戦略的思考を磨く。
1 戦略的思考のススメ―戦略的思考の基礎(戦略、先読みと均衡、リスクと不確実性)
2 考えるヒント―戦略的経済分析のキーワード(インセンティブ、コミットメント、ロック・イン、シグナリング、スクリーニングと逆選択、モラル・ハザード)
3 戦略的に解く身のまわりの経済学(値引き競争、オークション)
【感想】
この本は、ゲーム理論を身の回りの具体的な事象で平易に解説している。特に2部、3部では身近な事象を題材に、ゲーム理論のエッセンスを数値例なしで解説しているので、「なるほどそういうことだったのか」と理解させてくれる。
この本でゲーム理論自体を理解できるとは考えないほうがいい。ただ、自分が行う日常の判断やビジネスの意思決定が、それなりに戦略的思考をとりながら行われているということを知るだけでも興味深い。
なるほどと思った一つに、家電量販店の「他社より1円でも高い場合は値引きをします」という宣伝は,戦略的な見方をすると実は顧客へのメッセージではなく,「当社は価格競争をしたくありません.他社が価格競争を挑まない限り当社は価格を維持します」という他社へのコミットメントと見なすことができるという著者の指摘がある。

