『アダム・スミス』 堂目卓生 著 中公新書
2008年サントリー学芸賞を受賞した本書は、昨年末の日経新聞「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」で1位でした。
アダム・スミスと言えば、神の見えざる手とそれによる>市場主義経済という印象でした。この本の副題は、~『道徳感情論』と『国富論』の世界~。
金融市場主義経済が破綻し、世界中で多くの富が失われた。アダム・スミスは何を言いたかったのか。本書はスミスのもうひとつの著作『道徳感情論』に示された人間観と社会観を通して『国富論』を読み直し、社会の秩序と繁栄に関するひとつの思想体系として再構築しようと試みています。
以下、印象に残った記述です。
「正義感によって制御された野心、および、そのもとで行われる競争だけが社会の秩序と繁栄をもたらす」
「競争がフェアプレーのルールを無視して行われるならば、社会の秩序は乱れ、見えざる手は機能せず、社会の反映は実現しないであろう」
「スミスの議論の特徴は、人間の中に「賢明さ」と「弱さ」の両方があることを認めている点である。そして、人間社会の秩序と繁栄という大目的に対して、「賢明さ」と「弱さ」は、それぞれ異なった役割を与えられている。すなわち、「賢明さ」には社会の秩序をもたらす役割が、「弱さ」には社会の繁栄をもたらす役割が与えられている。特に「弱さ」は一見すると悪徳なのであるが、そのような「弱さ」も、「見えざる手」に導かれて、繁栄という目的の実現に貢献するのである。しかしながら、「見えざる手」が十分機能するためには、「弱さ」は放任されるのではなく、「賢明さ」によって制御されなければならない。」
全くその通りと思うことばかり。道徳心や倫理観の無い経済成長は幸福をもたらさないということを言っていたのです。今、経済学の真価が問われています。
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テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学
- 2009/01/28(水) 00:53:27|
- BOOK REVIEW
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| コメント:6
今ほど智恵が求められている時はないと思います。こういうときにチカラを発揮できないなら、なんの『知』か、とおもうんですよねぇ。ってまぁ、自分も何かしら頭を使いたいと思うのですが、悲しいっす。
- 2009/01/28(水) 08:40:08 |
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- Q8 #SFo5/nok
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>Q8さん
100年、200年遡れば同じような状況があっても、我々にとっては初めとの出来事が多すぎる今日この頃ですから、仰るように、それを乗り越える"知恵"が必要ですね。
最近は未知との遭遇な日常で、感覚が麻痺してきました(笑)
- 2009/01/29(木) 00:23:51 |
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- Yoshi #-
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フーバー大統領が「神の見えざる手」を信じて不介入政策を進めて失敗、その後ルーズベルト大統領がニューディール政策で景気打開を図りました。
アダム・スミスというとその「神の見えざる手」のイメージが先行してしまいます。読んでみようかな。
- 2009/01/30(金) 14:26:26 |
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- 西院梅太郎 #-
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>NOBさん
そうですね、歴史の教科書ですね。
ネットで見てると、この本の評価はかなり高いようですよ。
>梅太郎さん
中谷巖さんが近著で金融資本主義の罪について書いています。行き過ぎた規制緩和や競争導入が今の状況を作ったのではと。
現在、保護主義に向かってますね。行き過ぎなければ良いですが。
この本はお薦めですよ。
- 2009/01/30(金) 22:35:20 |
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- Yoshi #-
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Yoshi san,
ご推薦ありがとうございます。読んでみます。
民主党が規制、保護主義で修正するのはいいと思いますが、競争とのバランスが大事ですね。肉と野菜のバランスが大事なように。違うか。。。
- 2009/01/31(土) 23:10:56 |
- URL |
- 西院梅太郎 #-
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