読書日記:『日本歴史を点検する(新装版)』講談社文庫

海音寺潮五郎と司馬遼太郎という日本の歴史小説の系譜を代表する二大作家による対談集です。
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
青年を愛した長州、薩摩急旋回の因など、維新へ向けての諸藩の動静。勝海舟、西郷隆盛、島津斉彬、吉田松陰、大久保利通など傑物たちの人物と思想。幕府の善政、尊王攘夷と危機意識、日本人の潜在秩序、維新の二つの功績、封建の土壌の功罪等々―歴史文学の巨匠二人が博識を駆使して“日本人とは何か”を考察した快著。
【目次】(「BOOK」データベースより)
封建の土壌/イデオロギーと術/天皇制とはなにか/産業革命と危機意識/西郷と大久保/日本人の意識の底/幕末のエネルギー/言語感覚の特異性
<感想>
歴史小説の大作家同士の対談なので、話し言葉とは言え、難しい観念的な文章となっているところもあり、読み返さないと頭にはいってこない部分もあるが、司馬史観が存分に展開されており、それを受け止める海音寺潮五郎の歴史造詣の奥深さが読み応えがあります。
幕末の話題が多いので、幕末・維新好きの人にはお薦めの一冊です。
読書日記 『戦略的思考の技術−ゲーム理論を実践する』

『戦略的思考の技術 −ゲーム理論を実践する』
中公新書
著者: 梶井 厚志
【内容】
自分の利害が、自分の行動だけでなく、他人の行動によってどう左右されるか、という状態が戦略的環境であり、その分析ツールがゲーム理論である。ビジネス交渉はもちろん、バーゲンでの買い物や合コンの席順といったことまで私たちは他人の行動を織りこみつつ戦略を立て実行しているのだ。本書は身近な話題をふんだんに使い、コミットメント、シグナリングなどゲーム理論のキーワードを解説しながら読者の戦略的思考を磨く。
1 戦略的思考のススメ―戦略的思考の基礎(戦略、先読みと均衡、リスクと不確実性)
2 考えるヒント―戦略的経済分析のキーワード(インセンティブ、コミットメント、ロック・イン、シグナリング、スクリーニングと逆選択、モラル・ハザード)
3 戦略的に解く身のまわりの経済学(値引き競争、オークション)
【感想】
この本は、ゲーム理論を身の回りの具体的な事象で平易に解説している。特に2部、3部では身近な事象を題材に、ゲーム理論のエッセンスを数値例なしで解説しているので、「なるほどそういうことだったのか」と理解させてくれる。
この本でゲーム理論自体を理解できるとは考えないほうがいい。ただ、自分が行う日常の判断やビジネスの意思決定が、それなりに戦略的思考をとりながら行われているということを知るだけでも興味深い。
なるほどと思った一つに、家電量販店の「他社より1円でも高い場合は値引きをします」という宣伝は,戦略的な見方をすると実は顧客へのメッセージではなく,「当社は価格競争をしたくありません.他社が価格競争を挑まない限り当社は価格を維持します」という他社へのコミットメントと見なすことができるという著者の指摘がある。
読書日記:『誰のための会社にするか』
少し前に読んだ本の紹介です。

『誰のための会社にするか』 岩波新書
【著者】ロナルド・ドーア(Ronald Dore)
1925年英国ボーンマス生まれ。戦時中に日本語を習って、1950年に初めて日本に留学した時以来、ロンドン、ブリテイッシュ・コロンビア、サセックス大学開発問題研究所、ハーバード、MITの諸大学で教鞭を取りながら、主として日本の社会経済構造の研究および日本の経済発展史から見た途上国の開発問題の研究に専念してきた。
【内容】(「BOOK」データベースより)
どうすれば「正直でダイナミックな経営トップ」を確保できるか。アメリカ型の統治制度は日本に馴染むのか。「理想像」に沿った企業のありようとは?過去十数年の間に株価至上主義へと急激にシフトしつつある日本企業の現況を鮮やかに描き出し、問題提起する。長年、日本をつぶさに見続けてきた著者による、鬼気迫る警世の書。
【感想】
経営学の研究者でもなく、日本人でない著者が、日本人以上に日本的経営をアメリカ型の経営と精緻に比較しながら主張を展開していく。適宜、事件や公表されている資料をベースに展開する著者の主張は説得力がある。
会社をそのときどきの株式所有者のために存在するという株主主権論に対して警告を発している。従業員の経営への参画など日本的経営を準共同体組織として見た時に有効なコ−ポレートガバナンス論を著者は示唆している。
非常に読みやすく、単に経営学のみならず、日本の社会学までカバーする本著は楽しく読み進められる一冊です。
---------------------------------------------------
■著者からのメッセージ(本書より)
原稿を読んでくれた友人のコメント;「資本主義も、コーポレート・ガバナンスも、『本来の姿なんてない』といっているところが一番痛快だった」と言ってくれました。本の題を「会社は誰のため」などでなくて、『誰のための会社にするか』としたのはまさに、それを強調したかったからです。会社のあり方は――特に、会社が創造する価値(いわゆる付加価値)が、株主と従業員と、銀行と、(税金の形で)国庫の間でどう配分されるかは――政治的選択の問題です。 と同時に、その社会でどういう思想が「思想的制空権」を握っているか――会社法という仏にどのような魂を入れているか――にもよります。株価維持を世の社長たちの最大関心事にして、“静かなる株主革命”を固めたのは、頻繁に起こり始めた敵対的買収です。むかし、山師の業だった乗っ取りが、「活発なM&A活動」の一環として、紳士も当然使えるビジネス手法となったことです。 しかし、エルビス・プレズリー宅へお参りまでする総理を始め、アメリカかぶれの政府当局ほど、一般国民の思想はそう変わっていないとおもいます。額に汗を流して働いている人たちが、村上世彰氏の逮捕を見て、手をたたいているのは、彼がうっかりしてインサイダー取引を一回したからではない。彼の日ごろのマネーゲームの儲け方への反発だと思います。それなら、制度を変えればいい。より健全なステークホルダー資本主義への道について、僭越ながら、最後の章でいくつか提案を試みました。

『誰のための会社にするか』 岩波新書
【著者】ロナルド・ドーア(Ronald Dore)
1925年英国ボーンマス生まれ。戦時中に日本語を習って、1950年に初めて日本に留学した時以来、ロンドン、ブリテイッシュ・コロンビア、サセックス大学開発問題研究所、ハーバード、MITの諸大学で教鞭を取りながら、主として日本の社会経済構造の研究および日本の経済発展史から見た途上国の開発問題の研究に専念してきた。
【内容】(「BOOK」データベースより)
どうすれば「正直でダイナミックな経営トップ」を確保できるか。アメリカ型の統治制度は日本に馴染むのか。「理想像」に沿った企業のありようとは?過去十数年の間に株価至上主義へと急激にシフトしつつある日本企業の現況を鮮やかに描き出し、問題提起する。長年、日本をつぶさに見続けてきた著者による、鬼気迫る警世の書。
【感想】
経営学の研究者でもなく、日本人でない著者が、日本人以上に日本的経営をアメリカ型の経営と精緻に比較しながら主張を展開していく。適宜、事件や公表されている資料をベースに展開する著者の主張は説得力がある。
会社をそのときどきの株式所有者のために存在するという株主主権論に対して警告を発している。従業員の経営への参画など日本的経営を準共同体組織として見た時に有効なコ−ポレートガバナンス論を著者は示唆している。
非常に読みやすく、単に経営学のみならず、日本の社会学までカバーする本著は楽しく読み進められる一冊です。
---------------------------------------------------
■著者からのメッセージ(本書より)
原稿を読んでくれた友人のコメント;「資本主義も、コーポレート・ガバナンスも、『本来の姿なんてない』といっているところが一番痛快だった」と言ってくれました。本の題を「会社は誰のため」などでなくて、『誰のための会社にするか』としたのはまさに、それを強調したかったからです。会社のあり方は――特に、会社が創造する価値(いわゆる付加価値)が、株主と従業員と、銀行と、(税金の形で)国庫の間でどう配分されるかは――政治的選択の問題です。 と同時に、その社会でどういう思想が「思想的制空権」を握っているか――会社法という仏にどのような魂を入れているか――にもよります。株価維持を世の社長たちの最大関心事にして、“静かなる株主革命”を固めたのは、頻繁に起こり始めた敵対的買収です。むかし、山師の業だった乗っ取りが、「活発なM&A活動」の一環として、紳士も当然使えるビジネス手法となったことです。 しかし、エルビス・プレズリー宅へお参りまでする総理を始め、アメリカかぶれの政府当局ほど、一般国民の思想はそう変わっていないとおもいます。額に汗を流して働いている人たちが、村上世彰氏の逮捕を見て、手をたたいているのは、彼がうっかりしてインサイダー取引を一回したからではない。彼の日ごろのマネーゲームの儲け方への反発だと思います。それなら、制度を変えればいい。より健全なステークホルダー資本主義への道について、僭越ながら、最後の章でいくつか提案を試みました。
『竜馬がゆく』ベストシーンセレクションの紹介
司馬作品の話のついでにひとつご紹介です。
僕の友人でブローガーでもある西院梅太郎さんが、彼のブログで、『竜馬がゆく』ベストシーンセレクションの連載(7回もの?)を書き始めたようです。
オッと思われた方は是非アクセスしてみてください。
ワインとカヌーとビジネスとライフ
僕の友人でブローガーでもある西院梅太郎さんが、彼のブログで、『竜馬がゆく』ベストシーンセレクションの連載(7回もの?)を書き始めたようです。
オッと思われた方は是非アクセスしてみてください。
ワインとカヌーとビジネスとライフ
読書日記:『CSRの本質−企業と市場・社会』

正月休みに読んだ本の紹介です。CSRやコンプライアンスという言葉が、毎日のようにニュースで話題になる今日この頃ですね。
出版社:中央経済社
著者:十川 広国(ソガワ ヒロクニ)
慶応義塾大学商学部教授、商学博士。1942年大阪生まれ。1966年慶応義塾大学商学部卒業。1971年同大学院博士課程単位取得満期退学。慶応義塾大学商学部長、公認会計士第二次試験委員、通産省経営力委員会委員などを歴任
【目次】
序章 本書の問題意識・課題と構成/第1章 市場経済の変質と古典的自由経済理念が持つ問題/第2章 組織社会の発展と企業/第3章 コーポレート・ガバナンスをめぐる問題/第4章 生長鈍化と雇用問題/第5章 環境問題/第6章 イノベーションと企業/第7章 企業を取り巻く多様なステークホルダーと社会/第8章 CSRと企業の対応/第9章 CSRとグッドウィルの構築
【概要】
本書は、CSRの本質とは何かを問おうとしている。社会的制度として存在する企業とは、経済実体としての性格をも持ち合わせており、企業の価値創造プロセスの活性化をいかに果たすかがまず問題にされなければならないという主張が前提としてなされている。そのために価値創造プロセスの活性化、イノベーション問題などについての経営学的検討を理論的・実証的な視点から試み、CSRはいかにあるべきかについて、グッドウィルの概念を用いて検討している。(本書カバーより)
【感想】
最近、書店には多くのCSR関連本を目にしますが、本書は主要な経営学の学説の視点からアプローチしているので、主要な経営学説についてのレビューをすることが副次的にできました。
著者は「企業は、経営の好循環を実現するためには、まず企業活動への直接的参加者への利害の充足→価値創造プロセスの活性化→イノベーションの実現→経済的効率・CSRの遂行→グッドウィルの形成という関係を構築しなければならないものといえる。」と繰り返している。そして、トップマネジメントの果たすべき役割を述べている。
企業に対する社会的評価を『グッドウィル』とし、その重要性については良く理解できるのですが、『グッドウィル』は何によって計測が可能なのだろう。やはり企業価値の増加を意識した株価なのでしょうか。そうだとすると、株主を最重要なステークホルダーとする現在主流の企業経営と結局は同じにならないか、という疑問がやはり残ってしまった。
株主傾倒の企業経営からの寄り戻しとして、今後のCSRのトレンドを良く見ていきたいと思います。(最後は本書とは関係ない感想かも)
CSR関連本では、これも面白いようです。

